同時抽出発酵重合によるバイオマスプラスチックのワンポット合成
バイオマスプラスチックは生物資源から作られるサステナブルな高分子材料です。原料のモノマーは発酵生産で得ることができますが、培養液からモノマーを精製し重合に供する必要があります。しかし、モノマー精製工程は製造時の主なCO2生成源の一つであり、環境負荷の要因となっています。よって、モノマー精製工程を省略しモノマーの発酵生産と重合をワンポットで行えれば、製造プロセスの簡略化とCO2生成の抑制を実現できると期待されます(図3.1)。一方、一般に培養液には培地成分などの夾雑物が含まれるため重合反応には適しません。ところで、発酵生産可能なイタコン酸などのビニル系モノマーは嫌気下でラジカル重合できます。よって、イタコン酸を発酵生産しながら有機溶媒を用いて抽出および濃縮(抽出発酵)した後、発酵生産菌の呼吸により培養系内を嫌気状態にしつつラジカル開始剤を添加することで、イタコン酸を精製することなくポリマー化できると考えられます(図3.2)。
図3.1 (上)現在の方法と(下)本研究で目指すバイオマスプラスチックの生産過程
図3.2 同時抽出発酵重合
私たちは、このようにモノマーの発酵生産と重合をワンポットで行う手法を「同時抽出発酵重合, Simultaneous extractive fermentation and polymerization」と名付けました。本研究では、同時抽出発酵重合の実証のために、イタコン酸の発酵生産と重合をワンポットで行うために必要なデータを得ることを目的としています。将来的には、スチレンなど消費量が多いビニルモノマーにも本技術を適用し、汎用プラスチック製造のグリーンプロセス化に繋げたいと考えています。本研究では、持続可能社会に向けてバイオマスプラスチックが製造プロセスでもエコな高分子材料となるための礎を築くことを目指しています。